リンクシェルのイベントで、みんなと一緒に新しい戦績バトルフィールドに行った。
ゼオルム火山の奥にあるナバゴ処刑場ってトコ。
あたしはちょっと気乗りしなかったけど、イベントだし、みんな行くし、ってことで ついてきた。
やめておけばよかったかも、なんてついてから思うのは卑怯だ。
でも、やっぱりやめておけばよかった。
「ファニー元気ないね」
そう言って隣に座ったのはエラッタ。
人数が中途半端だから、今あたしとエラッタは待機組で、後はヴァンが壁を背にして目を閉じていた。
一緒に居るときは馬鹿ばっかりやっていたと思ったけど、やっぱり男の子。年齢を重ねた精悍な顔つきと、細身で小柄ではあるけど、しっかりと鍛えている身体は、私たちと暴れた頃よりずっと引き締まって見える。
「そうかなー?」
ヴァンから目を離してあたしはエラッタに取り繕った。
でもエラッタは勘がいい。
「違うでしょ、シオンさんが空気読まずにシィルさん連れてきたから居場所に困ってるって顔してる」
「そんなこと、ないと思いたいんだけどな」
あたしはシオンが好きだった。いや、現在進行形で好き。
でも、あいつはあたしがこんな風に思ってるなんて気付いてない。鈍感だもん。これでも告白したのに、あたしは言うタイミングを間違った。
ううん、間違ったんじゃない。あたしはあのタイミングでしか、あいつに好きだって言えなかっただけ。あたしは勝手に振られたと思ってるけど、きっとあいつはそんなこと夢にも思ってない。
だってあの時は、シオンもあたしも、ジールの死で動転していたから。
あいつにとってのあたしの告白は、慰めてくれる友人の言葉としかうつらなかった。
その後、あいつに彼女が、シィルさんが、彼女が隣に立つようになって、あたしはあいつにとって友人でしかなかったことを思い知った。
「でも、シィルさん可愛いんだよね。本当に」
「うん、わたしはファニーも可愛いと思うよ」
「ありがと」
エラッタは優しい。
本当にありがと、ともう一度心の中でお礼を言っておく。
「なんかね、この間ジュノでさ。シオンと歩いてるシィルさんにコサージュついてるの見ちゃって」
「そっかぁ」
「別になんでもないことなんだけど、モンクのあたしには似合わないじゃん。彼女凄く可愛くて、って嫉妬だねー」
「似合わないことないよ。女の子は誰でもお姫様になれるってアルが言ってた」
アルかよ、とか思ったけど口には出さない。
リンクシェルでは公に言ってないけど、エラッタとアルは超年の差カップルだ。
つか年の差どころかエルたるだし。あ、この場合はたるエルっていうのかな。
「だといいけどねー」
「じゃあさ、わたしと一緒にハベトロットの繭取りに行こう。そして作ってもらおうよ、コサージュ」
「エラッタ?」
「だって、買うと恥ずかしいでしょ。私だって、ちょっと憧れてるもの」
その言葉の裏に、アルは絶対買ってくれないし、ってついてるのが見えた。
そうなんだよね、実際コサージュなんて見た目だけだし、冒険者がつけてたところでなんの価値もない。
アルならきっとそう言う。ものの価値を分からない糞樽め。
「それにふたりだったら、ね。恥ずかしさも半分こでしょ」
あーもう、なんでこうエラッタは可愛いの。
この可愛さの半分くらいあたしにもあればなあ、っていつも思う。
あたしは可愛くない。
可愛く振舞うことが出来ない。
「ね、約束。一緒に行こう」
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