Scourge

 





 柔らかい土の上で腰を掴まれ突き上げられる。


 おざなりに振りかけられたオイルが、ヴァンの心とは裏腹に、熱くなる身体で溶けていく。揺さぶられる身体を支えようと地面についた手が、予想外に拾ってしまう快楽に震えた。
「ふ、ンっ」
 ため息にも似た吐息が口から零れる。
 肉の薄い尻に、堅い男の腰が打ちつけられるのは形容しがたい苦痛だ。強く腰を掴む男の手も、背後からかけられる荒い息も、楔のように打ちこまれた男のペニスも、全てが苦痛だった。
「もっと慣れてるかと思ったけど、意外とそうでもないね」
「そうか?ぶっこんで泣き叫びもしないんだぜ」
「そうだね、でも勃起してないし、狭いし、ぎゅうぎゅう絞めてくる」
 へぇ、と面白そうに笑った男が、ヴァンの髪の毛を乱暴に掴んで上を向かせた。
 喉の奥が、ひっ、と鳴る。
「噛むなよ」
 親指で唇をこじ開けられ、空いた隙間に男がズボンから取り出した半勃ちのペニスをねじ込んできた。息が出来ず思わず呻くと、ぐっと質量を増したペニスが咥内を埋めた。
 噎せ返り、まるで押し出されるようにこぼれた涙を男が指ですくう。
「口使うの初めてか、口で息すんなよ」
 後ろから突き上げられるたび、喉の奥にまで入り込んでくるペニスにこみ上げる吐き気。髪の毛を掴んでいた男の手は、いつしか両手でヴァンの頭を押さえつけ、快楽を貪る。上下から押さえつけられる感覚に、逃げ場をなくし押しつぶされそうだった。
 口でするのはこんなにも苦しいものだったのか、とどうでもいいことが頭をよぎる。
 してくれた昔の彼女の顔が思い出せない。彼女の顔は暗く、金髪の長い髪をポニーテールにしていたことだけがやけに鮮明で、口に含んで首を動かすと髪の毛がふわふわと動いた。
 だけど、もう顔も思い出せない。
 振られたとき、悲しかったのかどうかも、思い出せない。
 ああ、でも振られた日、アニスに愚痴ったっけ。
 なんでこんな事、しているんだろう、そう思い始めたとき腰の後ろに熱さを感じ、ぼうっとしていた意識が色を取り戻す。
「あーやべ、中でだしちゃった」
「女じゃないからいいだろ、出したんなら変われよ」
 唐突に口の中に苦い味が拡がった。気持ち悪くて男の腰を何度も押したが、男の手はヴァンの頭を押さえつけたまま離されることはなかった。溢れるように唇の端から男の吐き出したものが顎を伝って行く。
 余韻を楽しむかのようにヴァンの抵抗を眺めていた男の手がようやく離され、ヴァンは大きく噎せ返って口の中のものを全て地面に吐き出した。

 息つく暇もなくすぐに仰向けに転がされて、両足を抱えられる。
 たったさっきまで咥内にあったペニスが、今度は身体を割って挿し込まれた。根本まですんなりと呑み込んだヴァンに向けられる侮蔑の視線。動かされると中に出されたものが溢れて嫌な音を立てた。
「従順だな」
 自分の声じゃないような震えた声が喉から零れ、その声に反応して男の喉がゴクリと鳴る。今まで入れていた男が背後に回って、上体を無理矢理起こされた。
「んっ、あぁ」
 当たる場所が変わって今まで萎えていたものが僅かに反応する。
「お、反応した」
「不感症かと思ったぜ」
「や、やめて、ダメ」
 その部分を擦られるたびに、ヴァンの身体が大きく跳ねる。
 まるで雷に打たれたかのように走る痺れにも似た快楽。
「やめて、いや、ひぅ、やめ」
 腕を振り回し、首を横に振る。明らかに今までとは違う涙がぼろぼろとこぼれた。背後にいた男が、ヴァンの振り回した腕を掴んで押さえつけると、剥き出しの白い首に口付ける。
「やっと面白くなってきたかも」


「う、ンー!」

「お、またイッた」
 楽しそうに笑う男の手のひらに吐き出される精液。
 両腕は着ていた共和国服で戒められ、頭上でもう一人の男によって押さえつけられていた。同じ所を執拗に責め立てられ、喘ぎすぎた喉はからからで既に声は掠れている。
「いっ、も、動かな、いで…ひっ」
 先ほど交代した男がしつこく前立腺を刺激してきて、ヴァンは緩い射精を繰り返す。どこからそれ程溢れてくるのか分からないほど男の手の中で何度も吐き出した。
「気持ちがいい、って素直に言えよ」
「や、うっ」
 先端を擦られ、背中が反った。
「…きも、ち、いいっ」
「良くできました」
 男はヴァンの太腿を抱えなおすと深く腰を押し出す。その衝撃で短い悲鳴をあげたヴァンの口に、男の指が差し込まれた。
「舌噛むなよ」
 激しく腰を動かし始めた男の動きに合わせて身体が小さく跳ねる。目は開いているが、その焦点はどこか虚ろで。快楽を得て恍惚の表情を浮かべたまま、ヴァンは今日何度目かになる熱を腹の奥で感じて目を閉じた。



 

 

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