Scourge

 


 中をかき回すように腰を突き出すと、悲鳴にも似た声があがる。
 目の端からまた涙がこぼれたのが見えた。

 じっとりと汗ばむ身体を限界まで折り曲げて、零れる喘ぎを押し殺そうと口元を覆う両手。既にヴァンの性器は硬く反り返り、先端から溢れたもので腹を汚していた。その様子を面白そうにクラインは見下ろし、ヴァンの身体が一際跳ねる部分を責める。
「い、イっ…」
「いいよ」
 それだけで分かった、とでも言いたげに顎で促す。ぴんと、突っ張った足先が全てを表していた。
 ヴァンの身体が痙攣したように震え、抱えた腰にぐっと力が込められる。
 限界が近い。
「あはっ」
 ため息にも似た吐息が零れ、ヴァンは腹の上に吐き出した。
 勢いよく飛び出した精液はヴァンの顔と胸まで飛び散り、残滓がゆっくりと腰を伝っていく。吐き出すと同時に一瞬意識まで飛ばしたのか、焦点の合わない瞳が左右に揺れた。
 すぐに肩で息をしたヴァンが首を横に振る。達したばかりの性器を握り、腰を揺らしてやるとすぐにそれは硬さを取り戻し始めた。いや、とかだめ、とか聞こえた気がしたが、クラインは構わず奥へと自身を埋めた。
 白い喉が反る。
 もうヴァンは声を押し殺すことはしなかった。出来なかった。
 静かな部屋にヴァンの喘ぎ声とクラインが打ちつける腰の音、そして汁気を含んだ淫猥な音が混じる。
「くそ、っ…」
 息を詰めたクラインの表情に余裕はない。笑みをたたえていた口元は何かを堪えるように結ばれ、時折ため息のような息を吐く。
 体内で膨らんだ感覚に思わずヴァンが叫んだ。直後腹の奥で拡がっていく熱に、ヴァンもまた吐精する。大きく肩で息をすると、クラインはヴァンの頬に飛んだ精液を指で伸ばした。汗に混じった青臭い匂いが鼻につく。
「色んなもんでぐしゃぐしゃだな、えろくていい」
 指一本動かせないのか、だらしなく投げ出されたヴァンの身体を引き寄せると、腰を抱え上げた。
「あ、や」
 開いて緩んだ中には、まだクラインが入っている。腰を揺らされると、中で吐き出されたものが、いやな音を立てて溢れ出ていく。ヴァンはその感覚に顔を顰めた。

 酷く目眩がする。
 目を閉じてしまえばすぐにでも意識を失える。だけど、腰に溜まっていく熱がそうすることを許してはくれない。
 クラインが、身体の中を埋めていく。
 あれだけ鮮明だった痛いほどの快楽が、今は随分とぼやけて、ただ熱い。

 クラインはわざと水音を立てるようにヴァンの中をかき混ぜる。ヴァンの悲鳴とも喘ぎともとれない声が、途切れることなく口から溢れた。
「うん、ん、あ」
「なか、ぐちょぐちょ」
 恍惚とした表情でクラインは呟いた。
 シーツを握りしめたヴァンの手が戦慄き、喘ぎの中に嗚咽が混じった。


 

 

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