Giddeus/Catastrophe

 




 年端もいかない若いヤグード達が遠巻きに自分たちを恐る恐る監視する中、まるで観光気分でギデアスを散策する自分とヴァル。見付けた採集出来そうなポイントを重点的に探すもののなかなかお目当ての赤モコ草は見つからない。
「みつかんねーなぁ」
「ないね」
「休憩する?」
 そう言いながら既にドーム型の建造物に腰掛けたヴァルが自分を手招きした。
「補充」
「なんの」
 近寄ると抱き寄せられてヴァルの腕の中にすっぽりとおさめられてしまった。なんとなく居心地が悪い、というか、なんかこのパターンっていつも碌なことがない感じなんだよね。だけど少し肌寒かったから、ヴァルの腕の中は温かくてありがたかった。なにより風を凌げるのがいい。
「あぁ、そうだ」
 さっき拾ったんだった。
 鞄に無造作に突っ込んだヤグードの数珠を取り出す。雷のクリスタルを当てるとカッパーインゴットになるんです。もうね身ぐるみ剥いで数珠だけたくさん欲しい。草糸の方がいいとかそんな事は聞きたくない。
「また合成か」
「お小遣いだよ、コンクエ状況によっては忍具値上がりするしさ」
 最近ではエラジア大陸が人気なことと、低レベル層の狩り場遷移が著しくて三国間での勢力争いは軒並み獣人優勢になりつつある。そうなってくると困るのが、合成素材にもなり得る地域特産品。当然獣人支配地では特産品が各国に流れないから値上がり、もしくは品薄状態が続いてしまうってわけ。
 しかも獣人勢力が拡大して各国の情勢が拮抗してしまうと、忙しくなるのかそれとも儲けが出にくくなるのか普段手助けしてくれる一般の人たちも姿を見せなくなったりして、自分みたいな中間素材を作っては売りさばくようなせこい商売してると非常に困る。
「少しでもプラスにしておかないと、チョコボとかOPテレポとかでじわじわお財布軽くなるし」
 なるほどな、そうヴァルは頷いて自分が合成するのをじっと見ていた。もう騙されない。前回それでちょっと痛い目にあったし、ヴァルが合成も得意なのは分かってる。あと見てる感じお金にあんまり困ってなさそうだ。
「その数珠さぁ、ウィンの泥棒猫が安く買い叩いてるだろ」
「あぁ、うん」
 一瞬なんのことかと思ったけれど、泥棒猫とはウィンダスの泥棒ミスラ、ナナー・ミーゴの事だ。
 彼女はヤグードの数珠を集めていて、子分によるとご禁制品らしくその筋には高く売れるのだとか。当時はヤグードと同盟を結んでいるからあまり表だってヤグードを狩るような真似をしてはいけないのかと思っていたけれど、未だに真相はよく分からないまま。
 まぁ、他国籍の自分はそんなウィンダスの事情なんかちっとも考えずにあっさりとヤグードから数珠をたくさん奪って、彼女の口添えでノーグの商人を紹介して貰ったりなんかしたわけで。
 ちょっとした苦い思い出かもしれない。
 日刊ウィンダス紙の一面を飾る同盟国のヤグード大量虐殺的な。
「その数珠、何に使うか知ってるか?」
 なんとなくニヤニヤしながらそう言ってくるヴァルに不信感。よからぬ事を企んでいそうな表情にみえる。
「その筋に高く売れるんじゃないの?」
「どういう使い方、って言った方がいいか」
 分解、するのは冒険者だよね。ああいや、でも数珠からレアメタル取れるとか。
 んん、もしかするとウィンダスからヤグード教団にお返しするとか。すみませんでした、みたいな。
「なんだろ」
 分解する前の数珠を手にとってじっと見つめる。
 だらりと垂れた大小の数珠は首の後ろになる方が玉の直径が小さく、徐々に垂れ下がるであろう真ん中の部分に向かって大きくなっていく。大体インゴット取れるんだし、金属だと思うんだけど触った感じはそれほど金属質ではない。
「教えてやろうか」
 座ってたヴァルに引き寄せられて足を開かされる。
「え、えぇ?」
 耳元でヴァルの低い声が響いた。
「あいつらさ、これをここに入れて」
 指が足の間を滑っていく。
「前後で楽しんでるんだぜ」

 


 

 

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