Quicksand Cave/Catastrophe

 



 長く冒険者を引退していたフレンドが戻ってきたんだ、彼は嬉しそうにそう言って自分にまた問題ありそうなツアーのお知らせを持ってきた。続いていた色々なツアーの誘いは全部そのフレンドのため。そういえば、前回も前々回も、彼の隣に仲良さそうな人が寄り添って立ってたっけ。
 いっぱいいっぱい新しい世界を見せるんだ、と鼻息荒くして持ってきた次なる指令は、流砂洞アルテパゲート奥にて、サソリ一体の駆逐。
 あぁー、あれね。
 いいよといつものごとく安請け合いをして、今からゲートをあけるために移動するという彼とゲート前にて待ち合わせることになった。他にも数人いて、その人たちもゲート前に集合するらしい。その人たちは彼のフレンドではないので、何かあったらごめんね、と今回は先に謝られてしまった。
 すごく、問題ありそうなツアーです。
 でも大切なフレンドのためだし。
 彼がゲートを開くためのスイッチを操作しに行っている間に、問題のゲート前待ち合わせの三人と合流した。
 すっごい目つきの悪いエルヴァーンと、めがねをかげた神経質そうなヒューム、そして横にも縦にもでかいガルカ、という組み合わせは正直予想してなかった。
「こ、こんばんはー」
 パーティ合流のいつもの挨拶。ちょっとぶっきらぼうだけど、普通に挨拶が返ってきたのでちょっと安心する。
 当然だけど会話も特にないまま彼がゲートをあけてくれるのを待つことになった。結構つらい。そう思ってたら他の三人も同じ気持ちだったらしく、暇だなとのエルヴァーンの呟きに、皆一様に頷いた。
 しばらくしてゲートが開き、自分達は先に中に入る。
 すぐに向かうね、という彼の声を聞きながら場所を少しうつしただけで、先ほどと同じ無言の時間を刻んでいく。暇だなあ、ヴァルがいたらおしゃべりしてくれたのに、とか思ってたらパーティ会話で一人エメラルドに向かっていた人が悲鳴をあげた。どうしたの、という心配そうな声にその人はミスをして行動不能に陥ってしまったことを謝った。すぐに彼と彼のフレンドがその人のところに向かうことになり、ごめんね、もう少し待ってねと、やわらかい彼の声が届いた。
 けっして順調に行かないのが、彼と自分のツアー。
 はぁ、とため息をついてしまったら、咎めるようにエルヴァーンが話しかけてきた。
「おい、俺も暇なんだけど」
 そんなこと言われても。
「脱げば、ちんこついてるかみてやるから」
 【えっ!?】
 エルヴァーンのセクハラ発言に何故かヒュームが笑う。
「それともおっぱいあるの、俺はそっちのほうがいいけど」
「ないよ」
「声も高いね、すっげ子供みたい」
 何。いきなりなんなの。お酒飲んでるの?
 暇つぶしにも程があるでしょ。こういうのはスルーするに限る。見た目はタルタル並みに小さいけど大人だからね。
「ねえ」
 無視してたのにいきなり腕を掴まれて思わず振り払った。
「びくついちゃって、かわいいね」
 べ、べつにびくついてないんだけど。
 少しだけエルヴァーンと距離をとろうと後ろに下がったら、壁でもないのに背中が当たった。
 嫌な予感がして恐る恐る振り返ると、案の定そこにいたのは横にも縦にもでかいガルカ。思わず喉から変な声が漏れた。
 顔から血の気が引くのが分かる。

 

 

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