Girl in the Looking Glass/Catastrophe

 




 女神聖堂のわきを抱えられたまま歩く。
「何泣いてんだよ」
「うるさい」
 冒険者の殆どが拠点をアトルガンに移したとはいえ、そこそこに人通りもあるジュノで抱えられているのは抵抗がある。そうでなくても涙が止まらなくて恥ずかしい思いをしているのに、だ。
 下ろせよ、と言ってみるも甘ったるい声でだーめ、と言われた。
「変態幼女誘拐犯扱いされたお詫びしてもらわねぇとな」
「ごめん」
 でもあの状況は仕方がなくないだろうか。
 誰が見たって、あれは少女誘拐以外何ものでもなかったと思う。
 早とちりしたのは謝るけれど、状況がそう言っていたってのも分かって欲しい。だって、あの絵面はどう考えても少女に悪戯する悪人エルヴァーンそのものだった。そう誤解した自分は普通だったと思いたい。
 そう思ってるうちに、どこかの部屋に入った。
 見慣れたジュノのレンタルハウスだと気付くのと、備え付けのマホガニーベッドに下ろされたのは同時。
「さて」
 そのままベッドに押しつけられて、身体の上にのし掛かられた事で、異様な状況に気付いた。
 自分が男だからセックスの対象にならない、というのは冒険者業界ではあまり関係がない。特殊な環境に置かれる冒険者は結構な確率で同性でもいける人が多く、手近な誰かでさっさと処理を済ませてしまうことがある。自分だって、セックスまではしたことがないけど、手コキのしあいっことか普通に経験あるし、したことはないけどフェラチオして貰ったこともある。
 それもこれも男性冒険者の方が多いから、というのも理由のひとつだと思う。
 野良でパーティ組んだら全員男だったとかほんっとに多いし。去年の星芒祭なんか、組んだら男だらけで盛り上がって稼いだ後、寂しくガトーオーフレース喰って解散だった。そんな話はどうでもいい。
 今はそんな特殊な環境でもなければ、色んな意味でよりどりみどり選べるジュノだ。
 なにもこんなところで男の、しかも忍者とか、かわいげのひとつもない自分を選ばなくてはならないのか。
 理解、出来ない。
「ちょ、っと、なに」
「お詫び、して貰おうと思ってさ」
 振り払おうとした腕と掴まれて、ぐっと顔が近づけられる。
 整ったエルヴァーンの、深い緑の目が自分を見つめてくる。
「お、お金払う」
 咄嗟に出た自分の言葉は、後で思えばとても失礼な言葉だった。
「慰謝料、ってか?」
「払います。払うから」
「んじゃ精神的苦痛含めて300万ギル」
「えぇー」
 そんな持ってないです、素直にそういうとまけてくれるかなと思ったら、じゃあと言われて一張羅のマルクワルドコルを引っ張られる。首元に付けていたアクセサリが音を立てて床に転がった。
「やめて、いやだ、ぼく男」
 男関係ないって。
 案の定、彼は佩楯に手を掛けながら知ってるよ、と言った。
 ちっとも動じない。当たり前だ。
「ほら、金ないならサービスしろよ」
「えぇー」
 人前で誘拐犯とか言っただろ、とか、幼女誘拐とか変態扱いされた精神的苦痛は計り知れないわけよ、とか言いながら、膝まで佩楯を下ろされた。はだけられた胸に手を這わせながらじっと指で残っていた傷をなぞる。
「忍者の割に傷がすくねぇな」
「大地の守りとか、範囲スキンとか。そもそも後半タゲないし。HNMとかとやらないし」
 笑いながら腹に唇を押しつけられて、その感触にびくついた。
「ここ使ったことは?」
「ないですないです!ないふぇす!」
 尻に指当てられて涙目で首を横に振った。
 そこ入れるところじゃないです。いや知ってるけど。男同士だとどこにどうインサートするかとか知ってるけど、知りたくない。
「男同士なんて手コキしかしたことないです」
「へぇ、じゃあやってよ」

 【えっ!?】


 

 

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