休日の昼間はどちらかの部屋で過ごすことが多い。
数日張り込んで、目的のHNMを倒せば待っているのは短い休暇。その間に突然出現したHNMに突発で集合することは多々あるが、長年の感覚で大体の出現時期は把握していて早々出勤することもない。次は大体いつ頃、と簡単に打ち合わせして皆余暇に入る。
家庭を持つメンバも多いうちは、それだけ成熟しているということに他ならず、新興のLSのようにガツガツした部分がない代わりに、ある種の閉塞感がある。だがそれもまたいいものなのだと思えるようになった。
自分たちは家族だ。
そうアニスが育ててきたのだ。
今回はたまたま明け方の戦闘だった事もあって、恒例の祝勝会もなしにして、そのまま雪崩れ込むように部屋に駆け込むと倒れるように眠りに落ちた。
緊迫した戦闘が明け方に起きるのは精神的にも肉体的にもきつい。それは年齢的なものもあるのかもしれないし、所詮は人の子ということなのかもしれない。なんにせよ人には適度な睡眠が必要であり、それは張り込みの最中でも変わらない。数LSが張り込む戦場であろうとも、慣れたLS程仮眠を取ることを怠らない。そして、終わった後は存分に惰眠を貪ることが必要なのだ。
昼過ぎになり、太陽がほぼ真上まで昇った頃、ようやくヴァンは目を覚ました。
身体は馬鹿みたいに怠く、HNM戦闘における妙な興奮状態のせいで一度目をさますと中々眠れない。そしてこの興奮は、余計な熱も身体にもたらす。隣でまだ寝ているアニスの、長めの前髪を指ですくうと、ヴァンはそっと掴んでその頬に唇を落とした。
その瞬間頭を押さえつけられて、噛みつくように唇を奪われる。アニスの熱い唇が、唇に重なった。
「おき、て、たのか」
「そりゃ隣でお前が動けば、な」
挨拶代わりの口付けはいつになく甘くて激しい。
「お前で勃った」
「寝起きだからだろ」
呆れ顔でヴァンが唇をついばむと、アニスは頬をすり寄せてきた。
「脚開いて」
ヴァンが言われたとおり足を開くと、腰を引き寄せられアニスの硬いペニスが押しつけられる。ヴァンがそれに両手を伸ばすと、触れる直前に指を絡められシーツに押さえ込まれてしまった。
「ローション何処だ」
首元から微かに香る柑橘の匂いはアニスの香水。鼻腔をくすぐる柔らかなオレンジの香りは、大陸の違う遠い国を思い出させた。
「なくてもいい」
「馬鹿言え」
短く吐かれたため息にも似たアニスの吐息。
肩を竦めてヴァンはサイドテーブルの引き出しからローションを取り出した。両手にローションを馴染ませて、ゆっくりと体温で溶かしていく。
ヴァンが自分で手を背後に回すと、アニスはその手を握るかのようにして遮った。ヴァンの手からローションを奪うように撫でた指が、後孔にゆっくりと沈んでいく。
「増やすぞ」
頷くと指に僅かな力が込められ、身体の奥を貪られる。
しなやかなアニスの指がヴァンの身体を蹂躙していくのだ。抱きしめられた場所が熱を持って臍の辺りを疼かせる。ヴァンはアニスの首に腕を回し、引き寄せると唇を首筋に押し当てた。
手に絡ませたローションが、二人の体温で溶けて滴り落ちていく。唇が触れあうだけのキス。それが合図だ。
ゆっくりととろけそうに熱い内側へ、それ以上に熱いアニスを受け入れる。ひとつなっていく身体。
この瞬間だけはいつまでたっても慣れない。目を閉じて、衝撃に身構える。女の身体ではないから受け入れるのは容易ではない。それでも繋がる瞬間の言葉にならないような感覚は、アニスの体温を身体の中で感じる絶対の瞬間。
「あぁ」
深く繋がる。
毛穴という毛穴から汗が噴き出すのが分かった。少しだけ苦しくて身を捩るとアニスが強く抱きしめてくる。背中を弓なりにしならせて、息を吐く。身体が壊れてしまうのではないかと思う程仰け反らせた喉にアニスの唇が吸い付いてきた。
「う、ぁあ」
「お前って、挿れたら萎えるよな」
「違うよ。意識が後ろにしか、いかなくて」
繋がった部分に集中してそれどころではないのだ、と。
「でもちゃんと勃つ、から、気にしないで」
時間をかけてゆっくりと呼吸を整えても、アニスのそれを根本まで受け入れる頃には息も絶え絶えだ。自然に声が溢れる口元を手の甲で押さえ、歯を食いしばって奥の奥を割り開かれるのに耐えるしかない。そんな中で勃起を維持出来るかと言われると、正直なところ無理だ。入ってしまえばなんとでもなるが、萎えたペニスを見てアニスが萎えないように、挿れられる瞬間はなるべく握って隠すようにしてきた。
「でも勃ってた事もあったと思うんだが、最初の頃とか。俺、無茶するようになったか」
「それはクスリつか」
すぐに失言だと気づいてヴァンが慌てて口元を覆った。
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