今でも後悔している事がある。
過去のジャグナーでのことだ。
あのときの俺はどうかしてた、なんて言葉で簡単に片付けることは出来ない行為だった。
成長したカデンツァをジュノで初めて見かけたとき。あどけなさが残る何も知らなかった少年の顔が、世間を知って美しさだけを際立たせた青年の顔に変わっていたときの動揺は筆舌に尽くしがたい。
成長したカデンツァは美しかった。
遠くからでもすぐに分かった。何故すれ違う誰もが振り返らないのか不思議だった。何処にいても目を奪われるほどに輝いていたのに。
だけど多分、そのとき俺が味わったのは喪失感だったように思う。
最低な物言いだが勝手にも俺は、俺という庇護のもと、大事に可愛がってきたペットが野生化したような感覚を得ていた。
だから、確認したのだと思う。
まだ、俺の手を握り返してくれるかと。
また、俺のもとに帰ってきてくれるのかと。
そして俺は、俺の自己満足の為に、自らの手を汚さずカデンツァを深く傷つけた。
袂を分けた俺たちが、あのときまで出会わなかったのはアルタナの慈悲だ。
そして出会ってしまったのは、プロマシアの温情。 |