大聖堂にいた頃の俺に対する行為の大半は暴力だったと思う。
「おい、早くしろ」
持っていたスクロールの束を脇に置いて、引き摺られるように物陰に連れ込まれた。
こうなったら逆らっても痛い目を見るだけでどうしようもない。言われたとおり修道衣の裾をまくりあげ、壁に手をついて頭を下げる。
腰をつかまれ、声を上げるなと念を押すとそいつは無理矢理俺の中へとねじ込んできた。
痛みに歯を食いしばって耐えていると、中途半端な状態でバカみたいに揺さぶられる。
「時間ねえんだよ、いくぞ」
だったらやめておけばいいのに。
口に出していたのか、それとも心を読まれたのか。俺の腰を掴んで自分の腰を叩きつけながらそいつは.最近俺の順番がまわってこないだとか、レヴィオが邪魔をするだとかぶつぶつと言い訳する。
速度が増して、そいつの呼吸が荒くなった頃、俺は唐突に解放される。
腹の中に広がった熱が軽い絶望をつれてくるけれど、この感覚にもだいぶ慣れた。
一息つく暇もなく、音をたてて引き抜かれたそれを綺麗にさせられて、じゃあ後よろしく、この一言で俺はその場に置き去りだ。
この5年で嫌というほど思い知った。
大聖堂における俺の求められる役割は、信仰という名の下に黙って足を開く従順なペット。アルタナ様の足元で、高位の修道士相手に最高のご奉仕をするのが俺の役目。
たまに考える。
俺が来る前、俺の役割をここにいる誰かがやっていたのかと。
おとなしそうなあの人だろうか、それとも、アルノー様好みのあの人か。
深く考えると吐き気が込み上げてくるのでそれ以上は想像しない。
とりあえずスクロールの束を運ぶ作業に戻る。
邪魔されなければあと二往復で終わる簡単なお仕事。
だけどその簡単なお仕事が簡単に終わったことがないことに気付いて、俺はため息をついた。
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