新しく食べた魔物が消化不良をおこしたのか、それとも単純に先住魔物と相性が悪かったのか俺の組み合わせが悪いのか、あるいは単純な器のオーバーフローだったのか、良く分からないが体が重くて気分が優れないと思っていたら急に意識を失って倒れた。
多分一緒にいたレヴィオは顔面蒼白だったことだろう。
気がついたときはグスタベルグの岩棚の影でレヴィオに抱かれていた。
「気付いたか、大丈夫か」
しっかりとつかまれた肩と、かけられた外套。
日が翳っていたから随分と意識を失っていたらしいことが分かる。
「なんか、ごめん」
そういうとレヴィオは首を横に振って気分はどうだと俺を気遣う。
「ミュレクスは消化に悪そうだな」
冗談なのか本気なのか分からない言葉に思わず笑ったが、肩を掴んだレヴィオの手が震えていることに気付いてその手をそっと掴んだ。
「ごめん」
「いや」
そう短く言ったままレヴィオは黙った。
グスタベルグの寂しげな風景が茜色に染まっていく。
風は少しだけ冷たく、秋を匂わせた。
「お前が変わったら、俺も必ず変わるから」
突然呟くように、でもはっきりとレヴィオが言った。
ダメだと俺が口を開く前に、強く握り返された手で言葉を失う。
一緒に生きたいと、俺の人生と共にありたいと願ったレヴィオの言葉が繰り返し頭の中で響いた。本当なら、こんな人あらざる生につき合わせてはいけないと思う。俺はこの先出口のない奈落の底へと落ちていくだけだというのに、レヴィオは頑なに譲らない。
ついて来てくれなくてもいい。
その言葉だけでいい。
それでもきっとこの男は、俺が俺でなくなったとしても可能な限り隣にいようとするのだろう。
願わくば、俺が常時腹いっぱいでありますように。
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