あいつはとても親しげにカデ、と呼ぶ。
カデンツァはそれを普通に許容する。
眠ったカデンツァを背中から抱きしめて、耳元で囁いてみる。
「カデンツァ」
俺にはこれが精一杯で、どうやってもあいつのように親しげに呼べない。
俺には負い目がある。考えないようにしていても、それはどこかで俺の行動を制限する。
愛称というのは、立場が対等でなければ呼べないものだ。
俺はどこかで俺とカデンツァは対等ではないと思っている。
「愛してる」
俺の腕の中におさまる小さな身体はとても華奢で、多少の肉付きは認められるもののあの頃と何一つ変わっていない。
鼻をその首筋に擦りつけて肩に口付ける。
ほのかな石鹸の香りが鼻腔をくすぐった。
「れびお」
俺の名前を呼ぶ。
寝惚けているのか発音が若干怪しい。
それでもカデンツァは俺の名前を呼んでくれる。
「レヴィオ」
「ごめん、起こした」
「あつい」
抱きしめていた俺の腕をはねのけたカデンツァは、枕を引き寄せるとまたすぐに眠りに落ちた。
ちょっと泣きそうになったけれどおやすみ、カデンツァ。
本当に、本当に愛してる。
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