レヴィオに肩を支えられて物置の自室に戻る。
何が入っているかも分からない沢山の木箱の間に、粗末な寝台がひとつ。それが俺の6年間の全て。
ゆっくりと身体をうつぶせにして寝台に横たわると、レヴィオが無遠慮に修道服をめくる。痛い、と言いかけてやめた。そんな当たり前のこと、口に出しても何も変わらない。
「酷く腫れてる、血が滲んで、非道い」
レヴィオの戦慄く声。
もう何が酷くて、何が普通なのか、俺の中で分からなくなってきていた。
「痛いと、思った」
レヴィオの指が傷をなぞる。
それだけで肩が震えるほど痛い。
「白い、な。お前」
ここ6年間、陽の光などまともに浴びたこともないのはお前が一番分かってるだろうに。
黙ったまま、俺はため息をついた。
「やったの誰だ、名前を言え」
「いつもの、っい」
痛みに息が詰まる。
嗚呼、触るな。それ以上触るな。体中が痛い。
「熱があるじゃないか」
「熱いと思った」
額に触れたレヴィオの指先が冷たくて思わず目を閉じた。
「お前、やつれたよな」
「なにいきなり」
「お前、変わったよな」
レヴィオの声が震えていた。
何を言ってるんだ、俺は変わっちゃいない。
「ごめんな」
謝るなよ、今更。気持ち悪いな。
「今日は寝ていろ、俺がちゃんと言っておくから」
「期待はしてない」
前も酷い風邪をひいたとき、こんなやりとりをした気がする。
レヴィオは変わらない。
そうだ、みんな変わらないのだ。こうして、ただ年月だけが過ぎていくのだ。
「なぁ、カデンツァ」
「やめろ、名前を呼ぶな」
「カデンツァ」
頭を優しく撫でるレヴィオの手。
「やめてくれ、優しくされたら泣いてしまう」
じわりと滲んだ視界を、誤魔化すように寝台に顔を押しつけて、俺は声を押し殺して泣いた。
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