窓がうっすらと陽の光をうつす頃、アルザビの鳥たちが一斉に飛び立つ羽音を聞いた。
朝を告げる鐘の音。
目を開ければ、目の前には固く閉じられたレヴィオの瞳があった。一瞬心臓が跳ねるも、一晩中繋いだままの手のひらから伝わる温もりは、間違いなくレヴィオが生きている証。手は、俺とレヴィオの間だでしっかりと握られたままだった。
額に掛かった朱い髪の毛。
同じ色の眉毛と睫毛。
エルヴァーンらしい彫りの深い端正な顔立ちと、浅黒い肌。
それらの上に差し込む光がカーテンのように揺らめいた。まぶしさに目を細めると、レヴィオの繋いでない方の手が俺の背中に回される。そのまま強く引き寄せられ、肩口にレヴィオの呼吸を感じた。
「おはよう」
俺の肩口に顔を埋めたまま、レヴィオはまだ眠たそうな声でそう言った。
同じようにおはよう、と口を開くと、不意に首元に感じる温かい一滴。
あぁ、泣かないでレヴィオ。
「泣くなよ」
手を回してレヴィオに抱きつけば、涙を堪えて震える肩がダイレクトに伝わってくる。
「おはよう、レヴィオ」
「あぁ、おはよう」
こんな挨拶すら、自分たちは交わした事があっただろうか。
繋いだ手を強く握り締めて、逆の手で頭をそっと撫でた。思った以上に柔らかい髪の毛が指の間を滑る。背中にレヴィオの温かい手のひらの感触。
「おはよう」
もう一度囁かれる朝の挨拶は、懐かしいサンドリアの訛りで優しく響いた。
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