Confession

 





「なんであんなこっ…」

 部屋に入るなり抗議の声を上げたヴァンを、クラインは容赦なく何度も殴りつけた。
 口元を抑えよろめくヴァンの腕を掴んで引き寄せると、無防備な腹に拳をめり込ませる。悲鳴にもならない短い呻き声だけが部屋に響いた。クラインは息を詰まらせて膝を着いたヴァンの髪を掴むと、無理矢理上を向かせた。
「俺は早く来いと言った」
「あ、ご、ごめんな、さ」
 歯で傷つけた唇、鼻から流れた血が顎を伝って床に落ちる。
「やめ…」
「勃たせろ、早く」
 クラインの機嫌が悪い。
 それは最初のテルから何となく気付いていた。最近ずっとこんな調子で、酷く機嫌が悪い。少々の八つ当たりはあれど、今まで殴られたことはなかった。
 震える指先でペニスを取り出して口に含む。こんな行為にも随分と慣れた。歯を当てないように舐めて、吸い上げて、舌先で刺激する。だけど殴られて気が動転しているのか、思ったように口が動かない。
 勃起してくると鼻の奥を傷つけているからか呼吸もままならなく、苦しくて様子を伺うようにクラインの顔を見上げた。
「つかえないな」
「いぅ」
 掴まれたままの髪を引っ張られ、床に放り出される。蹴られる、と覚悟してすぐに身体を起こしたが、クラインはヴァンの脚を掴むとそのまま下衣を乱暴にずらしてヴァンの中に押し入った。
 大きく反った喉と背中。
 指先まで力が込められ、痙攣したようにびくびくと身体を震わせた。
「いっ、あ…ひぅ」
 乱暴に腰を突き出され、まるで押し出されるように涙が溢れる。
「泣けば許されると思うなよ」
 何がそれ程までにクラインを苛立たせているのか、慌てて首を横に振るが乱暴に揺さぶられ、零れるのは苦痛の悲鳴と涙ばかりだった。ズ、ズ、という擦れる音に、僅かに混じる水音。痛みで強張る身体で、クライン自身も痛いだけで気持ちよくないだろうに。力を逃そうと息を吐いてみるも、突き動かされる律動に息が詰まる。
「力抜けって」
 無理だって、と叫びそうになる。
「さっさと濡らすかなんか出来ないのか」
「むっ、り…」
 女じゃない。そんなとこ濡れない。絞り出した声はさらにクラインを煽った。
 いつもなら多少酷くされても快楽に従順になった身体は自ら求める。だが、痛みに支配された身体は僅かな快楽すらも拾うことはなかった。
「ん、うっ、く」
 全く反応しないヴァンのペニスを擦りあげて、クラインは舌打ちする。縋り付くように伸ばされたヴァンの手首を握ると床に押さえつけて抉るようにかき回した。
「もっと可愛い声出せよ、萎えるだろ」
 歯を食いしばって身を捩ると、クラインの平手が飛んでくる。慌てて顔を腕で覆うが、すぐに腕は掴まれ、さらに酷く殴られた。一度は止まった血が、流れていく温かな感触。懇願するかのように何度も謝罪の言葉を繰り返すが、それすらクラインの苛立ちを加速させるだけだった。
 腕を床に投げ出したままぐったりとしたヴァンの身体を、クラインはなおも乱暴に揺すり、溜まっていた欲望をすべてヴァンの中に吐き出した。
「終わったらさっさと帰れ」
 中から引き抜くと、一緒に床に散らばる白濁の液体。ヴァンが軋む身体を無理矢理起こすと、それは太腿を伝って流れ落ちた。その感触に顔を顰める。手の甲で鼻を拭うと流れ出た鼻血が赤い筋を作った。
 ヴァンは無言で着衣を整えると、ふらつく足でクラインの部屋を出た。怪我をしたままレンタルハウスに戻る冒険者も多い。すれ違う冒険者達も、見慣れた光景に誰も気にもとめなかった。鼻をすすると喉の奥に血の味が拡がる。
「痛い」
 誰に言うともなしに呟いて一瞬歩みを止める。
 泣きそうになるのを堪えて、ヴァンは自分のレンタルハウスに向かって歩き始めた。



 

 

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