Confession

 





 目を覚まし、身体を動かそうとして腰に走った激痛にヴァンは思わず呻いた。


「気分はどうだ」
 驚いて喉が鳴ったのをクラインは見逃さなかった。
「大丈夫か、お前二日くらい寝てたんだぞ」
 冷たい手が額に当てられ、ヴァンはもう一度目を閉じる。自分の状況を思い出しながら、乱れた呼吸を整え目を開けた。
「まだ熱があるな」
「ごめ、ここあんたのベッドだ。俺帰る、っていい?」
 伺いをたてるのは自分の立場を思い出したから。
 起き上がろうとする身体を押さえつけられて、慌てて身構える。そのちょっとした動作でも下半身に鈍い痛みを感じてヴァンは小さな悲鳴を上げた。
「うん、くっ」
 痛みに歯を食いしばると、慌てたようにクラインが押さえつけていた手を離した。
「すまん、痛かったか」
「あ、あ、ごめん、大丈夫。えーっと、したい?する?」
 涙目になったまま離れたクラインの腕に手を伸ばすが、その手は途中でクラインによってベッドに戻された。
「お前人の話聞いてるか?」
 イラっとした様子でクラインが低く唸った。
「お前酷い熱出してまるまる二日寝てたんだ、熱もまだひいてない。帰るもするも動けないだろ」
 まるで言い聞かすようにゆっくりと言われ、ヴァンは頷くしかなかった。
「で、でも、俺はあんたの機嫌取らないとダメなわけで」
「お前な、そういうのはアクアベールに包んで言え」
 舌打ちすると、クラインはヴァンの首元までシーツで覆った。
「いいから今は寝てろ、俺だって別にお前に酷いことしたいわけじゃないんだ」
 セックス中の写真で脅して男相手に足開かさすのは酷くないのか。シーツを握りしめたままじっとクラインを見ていたら、ため息をつかれた。
「言いたいことありそうな顔してんな」
 ヴァンは首を横に振ってシーツで顔を覆った。
「なんでもない、です」
 クラインはなんで男で勃つんだろうか、と漠然とした疑問がある。
 骨張っていて、硬い身体。股間には同じものがついてて、くびれたウエストもなければたおやかに揺れる胸もない。
 クラインにとって、ヴァンの性別が男であることはたいした問題ではないのかもしれない。むしろ、避妊の心配もしなくていいし、女の子のように優しく丁寧に扱う必要もない。多少の無茶も、例え傷跡が残ったとしても許される。
 考えれば考えるほど惨めになってきて、ヴァンはシーツの中で唇を噛んだ。近くにクラインの気配はするが、近寄ってくる雰囲気もない。本当にこのまままだ寝てていいのか迷ったが、あれこれ迷っているうちに心地よい睡魔がヴァンの意識を闇に引きずり込む。

 微睡んだ意識の中で、LSメンバの顔を一人一人思い出しながら、エル赤のセックスはしつこそうだ、とか禿侍は絶対早漏、とか馬鹿なことを考えた。
 クェスの髭は硬そうでやだな、とか、アニスは、きっと優しい、とか。

 

 アニスのあの大きな手が、どうやって身体に触れてくるのか、あの穏やかな顔が、どんな表情を見せるのか。どうせならアニスがよかった、などと思い至って、ヴァンは馬鹿らしくなって考えるのをやめた。



 

 

Next