Q034.Parts of favorite body/Onslaught

 



 

 昔、ツェラシェルに連れられてリンクシェルのイベントでプルゴノルゴ島へ渡った。
 そのときのことは今でもよく覚えている。ツェラシェルが集合時間を間違えていて、慌てて乗ったマナクリッパーもプルゴノルゴ島行きではなくマリヤカレヤリーフ遊覧という珍事だったからだ。
 結局イベントには間に合ったのだけれど、乗ってしまったマナクリッパーは何処にも行かない遊覧運行。1時間かけてビビキー湾から程近いマリヤカレヤリーフをゆっくりと一周して元の桟橋に戻ってくるパターンだ。
 乗ってしまったものは仕方がないのだけれど、男二人で1時間。
 正直途方にくれた。
 言わなかったけれど、海はとても苦手だったから。
 マナクリッパーは船室もないいかだ形の船で、俺はなるべく中央付近に腰を下ろした。ツェラシェルは申し訳なさそうにしながらも、どこで勉強したのか俺を相手に名所の案内をし始めた。することもなかったのでツェラシェルも必死だったのだろうけれど、俺は半分くらい聞き流していたように思う。
 20分くらい乗っていただろうか、ツェラシェルが俺の手をひいて立たせると、見てみろ、ここがマリヤカレヤリーフだと指をさした。
 深い青だった水が、まるで絵の具をたらしたようにエメラルドへと変わっていく瞬間を見た。
 太陽の光を受けて、海はただひたすらに青く、透明で、美しかった。
 いかだのへりに近づけば色とりどりの魚が泳いでいる。さんご礁もみえた。
 その光景は薄暗く冷たい俺の知っている海と、全く別物だった。
 見とれている俺にツェラシェルはようやく胸をなでおろしていたようにも見えたけれど、俺はそんな真っ青な海をみて、このマリヤカレヤリーフと同じ海色の瞳を持った別の男のことを思い出していた。

「俺、レヴィオの目の色が好きだ」
 急にそんなことを言い出したから、潮風を真正面に受け止めていたレヴィオが訝しげに俺を見た。
「なんだ急に」
「ちょっと思い出してた」
 夕日に照らされたベッフェル湾を見ながら、そっとレヴィオの手を握る。
 強く握り返された手に、俺は安堵した。

 


 

 

End