Q014.Present/Onslaught

 



 

 その日は用事を済ませてくるというレヴィオを、ツェラシェルとルリリといういつものメンバーで待っていた。
 特に今から何かするという予定ではなく、暇だからみんなでどこか遊びに行こうと声が掛かったのが午前中のこと。レヴィオを待つ間に何処へ行くかを決める、というのがメイン目的で、サブ目的は遅い朝食と新作のお菓子というのが現在シャララトにいる理由だった。
 早速ルリリと二人で新作のお菓子を頬張りながら何処へ行くか相談する。
「久しぶりに懐かしいところに行きたいわ」
「そうだな、最近はエラジア一色だからな」
 そう言って地図をひろげたツェラシェルは、ミンダルシアかクォンか、と聞きなれない大陸名を呟いた。
 俺といえば最近ようやく正式な冒険者になったばかりだから、エラジア以外は懐かしいというより新鮮で勝手が分からない場所でもある。行ったことがないわけではないところも多いけれど、殆どエラジアで過ごしていた分彼らとは感覚が違う。
「久しぶりにオズトロヤはどうだ」
「うわあ、懐かしい。シーフと必死になって競争した思い出ばかりだわ」
「そうそう、俺もだ。結局何日寝泊りしたか分からん」
 ルリリとツェラシェルが楽しそうに話す。
 首をかしげると、ツェラシェルが簡単に説明してくれた。
 昔オズトロヤ城にはとてもよいお宝が沢山あって、それらを目的としたシーフたちの一部が根こそぎ荒らしてまわったため、他の冒険者が必要なものを探してまわっても先を越されるばかりでなかなか手に入らなかったとか。
 今ではオズトロヤ城のめぼしいお宝はほぼ枯渇してしまったのでそんなことは起こっていないみたいだけれど、話を聞くだけなら面白そうで羨ましかった。
「今でもあの時俺を見て笑ったシーフの名前は忘れん」
「わたしもよ、今でも覚えてるわ。わたしたちのうらみは深いわよねえ」
 うらみがと言っている割には怒っているわけでもない様子で少し不思議だ。
「レヴィオも、やってたのかな」
「いや聞いたことない」
 ルリリも思い出すように首を傾げたが、二人ともレヴィオの名前は記憶にないようだった。
「あの頃それをよくないと思っていたシーフもいて、わたしたちの手伝いをしてくれた義賊もたくさんいたのよ。悪いことばかりではなかったわ。そんなことしなかったシーフもまた沢山いたもの。でもシーフに生まれたなら一度はやってみたいんじゃないかしら、とは思うわよね」
「まさしくあれはトレジャーハンターだったよな、俺もそういうスキルがあれば一度やってみたかったし」
 うふふ、と笑ったルリリが何かを思いついたように身を乗り出した。
「そうよ、レヴィオさんのプレゼントにコッファーにアストラルリング入れて鍵かけて渡せばいいんじゃないかしら」
「それある意味厭味だろ」
 一瞬意味が分からないという顔をしたのだろう俺に、ルリリが昔オズトロヤ城のコッファーに沢山あった指輪なのよ、と説明してくれた。
「でもレヴィオさん冒険者長いのでしょう、きっと分かって笑ってくれると思うのだけど」
 丁度間近に控えるレヴィオの誕生日プレゼントを悩んでいた俺たちは、ルリリの案にのってコッファーにアストラルリングを入れて鍵をかける、という一風変わったプレゼントを準備することに決めた。
 厭味だろといいながらも乗り気のツェラシェルも発案者のルリリもなんだか楽しそうで、俺も楽しくなってくる。
 結局プレゼントをそれに決めたこともあって、みんなで遊びに行く場所はオズトロヤ城をやめてウガレピ寺院となった。
 ウガレピで後衛だからとお布施しなかったツェラシェルが、みんなの怨みであっさりと這いつくばったのはまた別の機会に。

 

 

 

End