Q013.I am Lycopodium/Onslaught

 



 

 初めてレヴィオがあんなに酔っ払ったのを見た。
 いつになくハイペースで酒が進んでいたのに途中で気付いたが、色々あってそれを咎めることはできなかった。殆ど会話らしい会話もなく、淡々と酒を消費するレヴィオに俺もどう声をかけていいかわからなかったのもある。
 ぽつりと一言、過去に行きたいというから金を払って店を出たのが大分夜も更けてからのことだった。
 店は港に近い場所だったが、運よく船に乗るのか黒魔道士のミスラが走ってきたので金を渡して過去へ送ってもらうことが出来た。酷く酔っ払ったレヴィオにとってリトレースは相当のダメージだったようで、過去のウィンダスに到着するなり吐き倒していたものの、暫くするとおさまった様子で小さくごめん、と謝られる。
 それでもまわったアルコールが抜けるのには時間がかかる。
 サンドリアに行きたいのだろうなとは理解したけれど、レヴィオは酔いがまわりすぎていた。そんなレヴィオの手をとって歩き始めると黙ってついてくる。
 戦渦の残る町を横切って、サルタバルタにでた。
 今よりももっと青々とした魔力に満ち溢れた過去。
 もう戻らない世界。
 そう思っていても、今それを口に出すのは躊躇われる。
「なあ、カデンツァ」
 呼ばれて振り返る。先ほどまで繋いでいた手は離されていた。
 レヴィオは遠くだろうか、サンドリアの方向だろうか、とにかく俺とは別の方向を向いていた。
「なに」
 そう問いかけたら、レヴィオは足元をうろついていたリコポディウムの手を握った。驚いたリコポディウムの目が泳いで、助けを求めるように俺を見る。
 なんとなく月明かりに照らされたその光景が幻想的で、俺は笑いを堪えながらもその手は俺じゃないと言い出せずにいた。リコポディウムと俺の区別もつかないほど酔っ払ったレヴィオが愛しかった。
 夢想花。
 今日、今夜くらいは花咲くカブにレヴィオの隣を譲ってもいいかと思った。
 よい夢を。
 リコポンは夢想花使ってこないけど。

 

 

 

End