Q004.Your character?/Onslaught

 



 最近ルリリが性格診断からなる怪しげな占いに凝っている。
 俺個人としては占いなんて色々な意味でまっぴらごめんなのだが、どうも流行のようでシャララトでは同じ本を持った女性冒険者をよく見かける。
 何が面白いのか全く分からないけれど、自分を客観的に見つめなおすいい機会になる、と意外に乗り気のツェラシェルも相まって俺の周囲でも密かなブームになっていた。
「じゃあカデンツァ、質問に直感で答えるのよ」
 シュトラッチをおごるから、とおやつを餌に新しい診断を俺で試すルリリ。
 興味深そうに本を覗き込むツェラシェルと対照的に、普段あまり不快感を表情に出さないレヴィオがさすがにうんざりといった感じで珈琲をすすった。
「待ち合わせの時間はキッチリ守るほうだ」
「うん」
「料理や洗濯は好きなほうだ」
「いや」
「先のことを考えながら動くほうだ」
「全然」
「好奇心が強いほうだ」
「全く」
「他人の顔色や機嫌をうかがってしまうほうだ」
「うん」
 シュトラッチを食べながらよく考えずに答えていく。
 たまにレヴィオの視線を感じながらも、ルリリに言われたとおり直感だけで答えた。ツェラシェルもへぇ、とかふぅんと言った様子でルリリの手元を覗き込んでいて、混雑した店内でここだけよく分からない空間だ。
 長い質問がようやく終わると、ルリリはもの凄い顔をして俺を見あげる。
「カデンツァ」
「なに」
「あなた、生きているだけでいいタイプね」
 その瞬間となりのレヴィオが向かいに座っていたツェラシェルに向かって思いっきり珈琲を噴出した。
「うおぉいぃ」
「わり」
 慌てて木綿布を取り出したレヴィオにツェラシェルは不機嫌そうな視線を向けて自分の絹布で珈琲を拭った。このままだと染みになるから、と席を立ったツェラシェルに続いてレヴィオがそれを追いかける形で席には俺とルリリだけが残る。
「あなたはちょっとしたことで幸せを感じたり、やすらぎを得ることが出来るんですって。エコねぇ」
「そうかもね」
 なくなってしまったシュトラッチを置くと、ルリリが自分の目の前においてあって手をつけていないイルミクヘルバスを俺のほうへと寄越した。ありがたくいただく。
「ちょっとの幸せってだいじだわ」
「うん、俺もそう思うよ」
 そう言って俺はルリリのイルミクヘルバスを頬張った。

 


 

 

End