Q3.Sex/Onslaught

 



 夜遅くにルリリたちといつものようにシャララトの一角を陣取って騒いでいた。
 話題はつい先ほど行われたイベント、ミス?アルザビコンテスト。
 このイベントは普段クールを装った男性冒険者たちが女装して参加し美しさを競い合うというもの。表向きの趣旨はそうだけれど、実際は美しいというより色物を皆で笑うという方向が強いのはなんでもそう。当然会場だったアルザビは笑い転げた観客でごった返して、異例の入場制限までされたほどだった。
 俺たちもだいぶ並んでそれなりの席を確保して鑑賞していたが、その出場者のキワモノっぷりは筆舌に尽くしがたい。
「わたしはアイドルショーが最高だったわ」
 思い出して笑いがとまらなくなったルリリがクッションに突っ伏して小さな手で地面を叩く。
「あれは秀逸だった」
 釣られて笑うツェラシェルが笑いすぎてたまった涙を拭う。
 彼らの言うアイドルショーとはコンテストに出場したスキンヘッドのヒュームモンクグループによる演目で、夏の催し物として近年人気を誇るミュモルのショーを演じたものだ。
 筋骨逞しいスキンヘッドのヒュームモンクたちが女性用の水着を無理矢理着てハートのステッキを振るって舞台袖から出てきたときは隣にいたレヴィオまでも珈琲を噴出したほどのインパクトがあった。
 彼らはショーお決まりのパターンにのっとって得意技を披露し、結局汗飛び散る男臭いアイドルショーとなった。
「俺は特攻野郎オスラチームだな」
 レヴィオの言う特攻野郎オスラチームとは、ミスラの種族装備と耳と尻尾を身につけた男たちが踊るものだ。タルタルからガルカまで、全種族が揃って踊る姿はその外見の恐ろしさとは裏腹になかなかのものだった。
 その後もあのキモさは凄いとか、すね毛は剃ってくれとか好き放題に盛り上がったところでルリリが不穏な一言を放った。
「あなたたちも来年出たらどう。ほら、罪狩り三姉妹とか出来そうじゃない」
「やめてくれ」
「勘弁、それは勘弁」
 すぐにツェラシェルとレヴィオが全力で拒絶した。
「えぇ、似合いそうなのになぁ。レヴィオさんが長女で、ツェラ様が次女、カデンツァが三女でどう」
「どう、って似合わないだろ、というかあいつら兜で顔覆ってるだろ」
「じゃあアフマウ様とアヴゼンとメネジン」
「もう人ですらないだろそれ」
 アレコレ盛り上がるルリリとツェラシェルを横目にふと視線を感じて隣に顔を向けると、レヴィオがじっと俺を見ていた。
「なに?」
 首をかしげるとレヴィオは慌てて視線をそらす。
「いや、お前は白いナシラは似合いそうだな、とか」
 耳聡くルリリがレヴィオの呟きを拾って、そうよねと鼻息荒く興奮し始めた。
 そこからは誰がどんな装備が似合うだとか、あの装備は女だと可愛いだとかわけのわからない方向性で盛り上がって、いつになくツェラシェルまでもが着崩した大きいサイズのバーミリオクロークがいいとか細かいことを言い始めて収拾がつかない。
 気がつけばレヴィオまで身を乗り出して参戦しており、絶対領域がどうとか耳慣れない言葉が俺の前で飛び交った。
 正直俺にとっては男も女も胸があるかないかくらいでそこまで大きく変わる服装なんてないと思うのだけれど。
 それを言うとこの盛り上がりに水を差しそうな気がして、俺は珍しく自分の趣味を語るレヴィオとツェラシェルの話におとなしく耳を傾けた。


 

 

End