Affection/Onslaught

 




 カデンツァは言った。
 俺のせいではない、と。
 大聖堂時代がなくても、自分はこうすることで熱を冷ましたはずだ、と。
 だけどもし、大聖堂時代あんな事がなく、彼の信仰をいい形で昇華させてあげることが出来ていたら。あの時、あんな形で雇われ、性処理の道具として扱われなければ、大聖堂を飛び出し、アトルガンに渡り、力を求めて青魔道士の道を選ぶこともなかっただろうに。
「それは結果論だ」
 あっさりとそう言い切って、カデンツァは俺の首筋に噛み付くようなキスをした。
 相手は男でも、女でもいいらしいが、女の場合後で揉めたことがあってもう面倒だ、と笑われた。後腐れのない、一夜限りの情事を求め、ただ身体の熱を放出する為だけに身体を重ねる。そこにあるのは開放感と、突き抜けるような快楽だけ。
「誰でも良かったんだけど、誰でもよくなくなった」
 頬を両手で掴まれて、ガーネットの瞳がじっと俺を見つめた。
「あんたがいい」
 レヴィオが、いいんだ。
 囁かれる言葉は熱を持って俺の下半身に響いた。
「俺の熱を、さまして」
 繰り返し頭の中で何度も、何度も木霊するカデンツァの言葉。
 たった一つの言葉に涙が止まらなかった。
 俺が、いい。
 俺を、選んでくれた。数多の、カデンツァを取り巻く世界のなかから、俺を選んでくれた。
 涙で滲んだ視界。分からないままカデンツァに激しく口付けた。下半身を擦り合わせ、勃起したお互いの性器を刺激し合った。先走ったもので腹が濡れ、そこをお互いの肌で擦りあい、空気を含んだ淫猥な音を立てはじめる。
 もう一度オイルを手にとって、性急に、濡らした指をカデンツァの中に差し入れた。
 カデンツァは太股を僅かにひらいて、俺の指が奥まで入り込むのを促す。サイレントオイルによってしっとりとした感触は伝わってくるものの、いつもならするであろう水音は耳に届かない。塗り込める、というよりたっぷりと含ませた内側を確認して、俺はゆっくりと指を引き抜いた。
 膝を立てたカデンツァの太股に手をかけると、カデンツァの手が太股を抱えた。身体を折りたたむようにして、足を開き、尻を浮かす。もう一度柔らかいそこに指を這わし、場所を確認するように撫でれば、透明のオイルが溢れ、尻を伝っていくのが見えた。
 勃起した性器の先端をあてがって、軽く押しつければ、柔らかいそこが俺を飲み込んだ。
 短く吐き出した息。
 それにあわせて、俺はゆっくりと俺自身をカデンツァの中に押し進めていった。
「あ、ぁ、あっ」
 俺の身体で太股が押さえられ、カデンツァは抱えていた太股から手を離すと手の甲を口元に当て喘ぎ声を押し殺す。しっとりと絡みつく内側は、俺を拒むことなく受け入れた。サイレントオイルの効果があるとはいえ、カデンツァの狭い内側はぎゅうぎゅうに俺を締め付けてきた。
 狭い、が、気持ちがいい。
 カデンツァの尻が俺の股間に当たって初めて全部入った事に気がついた。馬鹿みたいに熱い内側が、動いてもないのに締め付けてきてそれだけでもうどうにかなりそうだった。
「カデンツァ」
 全部入った。
 俺が、全部入ってる。
「苦しく、ないか」
 カデンツァは首を横に振る。
 つらくないか、大丈夫か。
 途中で嫌になったり、痛かったらすぐに言ってくれ。傷つけたいわけじゃない。無理矢理したいわけじゃない。
「気持ちいい、か?」
 カデンツァの両腕が不意に俺の首に回されて抱きしめられた。俺の身体が進んだ事で、カデンツァの腰はさらにあがり、結果的に俺をもっと深い場所で受け入れる。
 喉が鳴った。
 だけど、カデンツァは小さく、気持ちいい、とだけ俺の耳元で囁いた。
 動いて、と囁かれ、暴発寸前の俺をカデンツァの腰が軽く揺する。


 

 

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