Ro'Maeve/Catastrophe

 




 なんとなく気まずい、というより恥ずかしくて連絡できないまま既に数日。
 だって、お尻に指入れられてヴァルの手のなかに。いやもう、だめ、思い出したらダメだし。
 というわけでヴァラー兼ねて金策に来たロ・メーヴでしばしの休息を取る。
 絶対あっちから連絡来ないし、とリンクパールより少しだけ大きめの真珠を指で転がして初めて、自分のフレンドリストの相手にも同じことをしていたということに思い至った。
 なにかあったら呼んでよ。
 そう言ってこちらから連絡を入れなかったのは誰だ。連絡くれないって愚痴って、自分からテルしたことなんかないくせに。相手も同じ気持ちで自分からの連絡を待っていたかもしれないのに。
 まぁ、ポジティブに考えすぎだろとは思うけど。
 でもつながりって、最初は蜘蛛の糸みたいに細くて今にも切れそうなもので、それをお互いに少しずつ紡いで太く硬くしていくんだと思ったんだ。
 そう思ったらいてもたっても居られなくて、フレンドリスト唯一の彼に思わずテルをした。
 どうしたの、珍しいね。
 いつもの調子で笑いながら彼はそう言って、連絡くれて嬉しいよ、って言ってくれた。
 ごめんなさい、今までたくさん連絡をくれたのに自分はいつも受身だった。
「あのね、もし週末暇だったらフレンドも一緒に光る眼とかどうかな、って」
 端末越しにすぐいいね、と明るい声が返ってきてすごくほっとした。
 初めてシャウトで募集しないでフレンドに声をかけた、自分の記念すべき第一歩。
 ヴァルと逢わなかったら、きっとこんなふうに変われてない。こんなこと考えもしなかったと思う。
 フレンドと週末の約束をかわして通信を閉じた。
 今はとにかくお礼を言いたい。
 ヴァルありがとう、って。
 すぐにシグナルパールを装着していつものコール。コールはきっちり3回、これはヴァルの決まりごとかなんかなんだと思う。よく分からないけど、へんなところで几帳面だし。
 自分がテンション高いからか、心なしかヴァルの応答も明るく感じた。
「ねえヴァル聞いて」
「なんだよ急に、待ってろよ今いくからさ」
 すぐだよ、って言う間もなくヴァルがシグナルパールの不思議な力を利用して目の前に現れる。数日逢ってないだけなのに、なぜか懐かしい感じがして思わずその胴体に抱きついた。
「おわ、おま、なんだ」
「ぼくたちつながって、太くて、かたくなるんだよ」
「かた、つながる、ふと」
「ありがとう、ヴァル。ぼく、ヴァルに逢わなかったらつながるよろこびも知らないままだった」
 なぜかヴァルが頭上で自分の言った言葉を繰り返しているのが気になったけど、なんとなく喜んでくれているのは分かった。すごく幸せで、強く抱きついたらヴァルもまた強く抱きしめ返してくれた。
 フレンドって、いいな。
 いつかヴァルから今日どうよー、なんてテルが来たらいいな。
 抱きついたヴァルのぬくもりに満足していたら、いきなり鼻息を荒くしたヴァルに持ち上げられてキスされた。そりゃさ、忍者だから軽装だよ。だけどそんなあっさり軽々と持ち上げないでくれないかな。軽くショックだ。
 そんな自分の気持ちなんか露知らず。
「さあ確認しよう、悦びを!」
 いきなりヴァルはそう叫ぶと自分を肩に抱えた。
「かたくて太いもので繋がろう」
 もの凄い無駄に爽やかな笑顔で白い歯を輝かせるヴァル。
 え、だから繋がってるよねって話をしてたはずなんだけど。なんか勘違いしてない。ねえ。絶対勘違いしてるって。
 ヴァル、どこいくの。
 ね、ちょっと、あ。
「ナイトメアベースわいた」
 突然背後に浮かびあがったツボがやけに大きかったから、目を凝らしてよくみたらNMだった。
 無言でヴァルは自分を床に下ろす。
 なんとなく背中が泣いてる気がしたけど気にしない。そのままナイトメアベースをフルボッコにして、お目当てって程でもないけどちょっと欲しかった鎬がツボのなかに入ってなかったことを確認するとヴァルが頭を撫でてくれた。
「この間、飯行けなかったし飯でも喰いにいくか」
 頷くと顔が近づいてきて、軽く唇にキス。
 ヴァルの過剰なスキンシップにも大分慣れてきたけど、やっぱりフレンドづきあいって難しいなぁ。


 

 

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