Girl in the Looking Glass/Catastrophe

 




 結局なんだかんだで彼に関する情報を集めると、思った以上に集めてくれたと感謝された。
 最初から期待してなかったのか、なんて思ったけど、感謝されるのは正直嬉しい。最近感謝されるようなこともなかったから、特に。
 また何かあったらお願い、とか言われて、なんとなくミスラと仲良くなってよく話すようになった。
 彼女はトレジャーハンターであって冒険者ではないから、一緒に何かをする事はないけれど、お宝に対する情熱は何も変わらない。特に最近近東のお宝にはまっているらしく、先日探していたのもその近東のお宝に関するものだった。
 そのお宝とは、鏡。
 昔から鏡には何か不思議なものが宿る、だなんて聞かされてきたから世の中に不思議な鏡があってもおかしくはない。そんな鏡の持ち主を彼女は捜していた。どういう効果が、とかそういうものではないようで、とにかく珍しい「お宝」が欲しいという純粋なものだ。
「なるほどねぇ」
 暇を持て余した自分と、熱くお宝について語る彼女。
 上層の競売がある路地から少しだけ離れた場所で、軒下に座り込んで世界中のお宝の話を聞いていた。
「その鏡は近東から伝わった、って言われてるだけだから定かではないのだけれどね」
 通り過ぎる冒険者を眺めて、こんな沢山の人の中からそんな鏡を持っている人を探すなんて無謀にも等しい気もする。きっと色々と情報を集めてきて欲しいって頼んだ冒険者は自分だけではないのだろうけどさ。
 そうこうしてルト、───ミスラの希少なお宝の話を聞いていたら、近くでご婦人がなにやら困った様子で辺りを見回していた。
 目が合った、と思った瞬間、ご婦人はこちらに走り寄って来て言った。
「ねぇ、そこの方々」
「わたしたちに聞いているのかしら?」
 話を中断されたルトが僅かに顔を顰めてご婦人を振り返る。
「えぇ。そちらの方も。わたくしの娘が見あたらないんです、ご存じないかしら」
 そういわれたルトは満面の笑みで自分を前に押し出して、この人は冒険者なのよ、そういう頼まれ事には慣れているはずよ、と言った。厄介事を押しつけられたような気もしたけど、前向きに。前向きに。
 そんなこんなでご婦人からいなくなってしまった娘さん探しを頼まれた。
 この広いジュノで迷子捜しなんてしたことがないけれど、ジュノを出ていないならまだ探しようもある。ご婦人から娘さんの着ているものや大体の容姿を聞いて、結局また安請け合いしてしまった。
 見つからなかったら、どうするんだろう。
 子供なのに。
 一応ジュノの警備部にも連絡しておいてください、と言ってご婦人の連絡先を聞いた。もしかしたら誘拐とかかもしれないし。自分で探せなかったら他の人にも頼んで欲しいと念を押して。
 ご婦人が走り去った後、ルトが言った。
「娘さんがいなくなるなんてたいへんそうね、って思うわよ。けどわたしには興味のないことだわ。もちろん、お宝が関係しているっていうなら別だけど」
 折角前向きに考えたのに。
 とりあえず外に出てしまっていたら探しようがない。
 そう思ってルトと別れ、上層バタリア出口にいる警備部の人に声を掛けたら、以前自分が探し人をしていた事を覚えていたらしく、彼と話す機会があったからと、もう必要のない情報を教えてくれた。残念ながら今度探しているのは少女なんだ、と言うとあぁ!と大声をあげられた。
「そういえばですね」
 彼が言うには自分が以前探していたエルヴァーンと、その探している少女がほんのつい先ほどここで話していた、らしい。
 もう、えーって思いっきり声を出してしまった。あっさりこんな情報が手に入るなんて思っても見なかったからだ。
「その時の子がその少女だと思うんですよねぇ。何処に行ったかとなると分からないですけど」
 というか、それって幼女誘拐じゃないの。
 そいつ、なんでそんな少女に話しかけてたの。
 詳しい会話の内容は分からないけれど、その後エルヴァーンはエルディーム古墳に行くと言ったらしい。古墳で何する気だ、幼女趣味の変態首ヴァーンめ。
 こうしてはいられない。
 早く古墳にいかなくちゃ。

 

 

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